物流・在庫管理 / COLUMN

在庫が合わない会社が 最初に見直すべき3点

帳簿上の在庫と現場の数量が合わないとき、まず疑うべきは人の注意力ではありません。品目の定義、入出庫を記録するタイミング、差異を振り返る仕組み。この3点を整えると、在庫管理は「年に一度の棚卸」から、日々の経営判断に使える情報へ変わります。

棚の在庫をバーコードで読み取り、在庫データと照合するイメージ

在庫差異は棚卸だけの問題ではない

帳簿では100個あるのに、棚には92個しかない。こうした差異が出ると、まず現場へ「数え間違いはないか」と聞きがちです。しかし実際には、入荷は記録したが移動を記録していない、返品を隔離したまま在庫に戻していない、セット品と単品で数え方が違う、といった工程のずれが積み重なっていることが少なくありません。国税庁も期末の実地棚卸だけでなく、受払帳など帳簿による把握を併用して数量を確定する考え方を示しています。つまり、数える日だけ頑張っても、日々の入出庫の記録が曖昧なら、また差異は戻ります。

1. 品目・単位・場所の表記をそろえる

最初に見直したいのは、何を一つとして数えるかです。「箱」「ケース」「枚」「セット」が部署ごとに違えば、同じ在庫表でも比較できません。品名、SKUや品番、数量単位、荷姿、保管ロケーションを一枚の台帳で決め、現場表示と帳簿の表記をそろえます。例えば、10個入りの箱を「1」と数えるのか、中身の「10」と数えるのかは、正解を選ぶ話ではありません。受注、出荷、発注、棚卸のすべてが同じ単位で動けるようにする話です。国税庁も棚卸表では、商品を種類・品質・型などの異なるごとに区別して数量と金額を記載するよう案内しています。

2. 入出庫を後回しで記録しない

在庫差異の原因を調べると、実は「何も記録していない」より「後でまとめて入力する」が多くあります。忙しい時間帯に仮置きした商品、検品待ちの返品、別ロケーションへ動かした資材は、記憶だけに頼るほど漏れやすくなります。大がかりなシステムを入れる前に、まず在庫が動く場面を時系列で洗い出してください。入庫、検品、棚入れ、ロケーション移動、引当、出荷、返品、廃棄、棚卸。このうち誰が、いつ、何を見て、どこへ記録するかを決めます。中部経済産業局の中小製造業向け資料でも、二次元バーコードやRFIDを用いた入出庫処理、ロケーション管理、現品照合が、実在庫の把握や誤記載の防止につながる機能として整理されています。ツールは後からでもよく、先に記録のルールを一本化することが重要です。

3. 差異は理由別に残す

棚卸で差異を見つけたら、帳簿を実数へ合わせて終わりにしてはいけません。差異の理由を少なくとも「入出庫の未記録」「単位の取り違え」「ロケーション違い」「返品・不良品の扱い」「破損・廃棄」「原因不明」に分けて残します。月ごとに差異の件数と数量を見れば、どの工程から改善すべきかが見えてきます。ここで重要なのは、個人の責任追及を目的にしないことです。原因不明が多いなら、記録のタイミングや保管場所の設計に無理があるかもしれません。中小企業庁の白書でも、在庫管理の頻度には企業間で大きな隔たりがあり、業種ごとの商習慣も踏まえた見直しの重要性が示されています。自社の扱う品目数、回転率、保管環境に合わない運用を続けないことが出発点です。

まずは差異が大きい20品目から

全品目を一気にきれいにしようとすると、現場は止まります。まずは売上影響が大きい、単価が高い、出庫頻度が高い、差異が繰り返し出る品目を20程度選びます。その品目だけで、現物・帳簿・ロケーション・直近の入出庫履歴を照合する。差異が出たら、どの工程で情報が途切れたかを書き出す。この小さな棚卸を週次または月次で回すと、年次棚卸の負荷を下げながら、改善点を日常業務へ戻せます。

在庫精度は経営判断の土台

在庫が合う状態は、欠品を避け、余剰在庫を抑え、納期や利益を正しく判断するための土台です。だから、在庫管理を倉庫だけの仕事にしないことが大切です。営業の受注条件、購買の発注単位、製造や加工の歩留まり、物流の出荷実績まで、同じ在庫情報につながっています。帳簿と現場が合わない会社ほど、いきなりシステム比較へ進む前に、品目の定義、記録のタイミング、差異の振り返りという3点を点検してみてください。そこが整理できれば、Excel運用を続けるのか、バーコードや在庫管理システムを導入するのかという判断も、ずっと現実的になります。

参考資料

本文中の制度・運用に関する記述は、上記の公開資料を参照しています。現場での進め方は、当社の物流・在庫管理支援における一般的な実務観点です。